goodday20221010のブログ

読書日記、たまに暮しを綴ります

読了(ポーランドの人)J・M・クッツェー

★ポーランドの人


J・M・クッツェーは、南アフリカ出身の小説家、エッセイスト、言語学者、翻訳家



2003年のノーベル文学賞の受賞者 オーストラリアの市民権を取得



少数の白人が、有色人種を「合法的」に支配、搾取するアパルトヘイト体制下の南アフリカに育ちます



作者は、アパルトヘイト体制から最大の恩恵を受ける世代として育ったと気づき、植民地主義を発展させた西欧の近代思想を、根底から問いなおす と



さて本題、作者が恋愛小説とは珍しいとのこと



「あなたは安らぎをあたえてくれる」とベアトリスに告げるのは、ショパン弾きのポーランド人 ヴィトルトだ 



バルセロナに招聘され、ショパンを弾く彼は、ヨーロッパ文学古典ダンテの信奉者



コンサートを企画したベアトリスは、二人の息子を育てた銀行家の妻だ 



物語は、ベアトリスの視点に移り、舞台は、バルセロナからマヨルカ島に 



マヨルカ島はショパンとジョルジュ・サンドが逃避行したところ 



ショパンと社交界で名をはせる子連れ作家・サンドのスキャンダラスな恋愛の余韻が 



恋愛小説としては、男女の接近は、第三章で終わり、第四章からは、このピアニストは、かなわぬ恋の相手に、死後世界で結ばれると信じて長い詩篇を書いて死んでしまう



ベアトリスは、自分への遺品があると、ドイツにいる彼の娘から連絡を受け、ついにはワルシャワにでかけ遺品を持ち帰る



ポーランド語で書かれた詩篇は、ブロの翻訳者の手でカタルーニャ語に



詩篇の内容は、肉体的な愛を精神的なものへと飛躍させようとするものだった 



詩篇にはダンテを引用し、ベアトリスは、彼の思い描くものに、一方的にその感覚やイメージに、正当性をもたせようとしていることに面食らう 



恋は盲目、そんなストーカー性を、作者は心理学的に解剖していきます



たまに、ベアトリスと夫(彼のことは多少知らされている)の会話も、安全弁にしているところも面白く 



この作品には、いろいろな言語が出てきて、「伝わらなさ」もコミカルに描かれています



その中で、ポーランド人にいきなりロシア語で話しかけるのは、侮辱に近いと警告するのも 歴史ならではかと



作者は、生い立ちもあり、「人は自己形成期における時代と状況を、あとから相対して批判検証することはできても、そこから、完全に逃れることはできない」と 



また、自分の文章を「自分は、良質でシンプルでエコロジカルな英文を書いている フレキシビリティをつけ、音楽的な視点から、読者の注意をひきつける英文を 」と述べています



お読み頂きありがとうございます

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