goodday20221010のブログ

読書日記、たまに暮しを綴ります

読了(暗闇に戲れて 白さと文学的想像力)トニ・モリスン

★暗闇に戲れて

白さと文学的想像力


作者は、アメリカ文学でピュリッツァー賞他


1993年、アフリカ系アメリカ人として初めてノーベル賞を受賞



ハーバード大学での講義から生まれた、人種問題をめぐる革新的著書です



ポー、トウェイン、ヘミングウェイの作品を通じて差別の構造を分析



白人男性中心のアメリカ文学史の支えている思考を取り出し、分析、限界を指摘しました



またアメリカ文学を評価する上で基盤そのものも革新した と



日本人にとって、アメリカは明治以降、常に近しい国だが



それはアメリカの知識を、我々が豊富に持っていることでない



アメリカ文学自体が、実は日本人にとって遠い存在で



イギリス・フランス・ドイツ・ロシアの文学の方が、明治以降の日本において、近代文学として輸入され続けてきたから(ノベルと分類)



アメリカ文学の主流は、ロマンスと呼ばれ、空想や冒険、恋愛など


波乱万丈なエンタメ的な面白さ中心だから



「普遍的な価値観」という、ヨーロッパの男性知識人が



都合のいいように作り上げた文学観が、アメリカにも輸入され



それは、アメリカの白人男性のローカルな価値観でしかない と 


 

人種差別という行為、そうした人種差別の源になるのが、人種主義だ 



人種主義が、アメリカにおいて、現代にいたるまで、存在している



根源は、奴隷制がある 



ヨーロッパはもともと強固な階級が存在するが、それに不満を持つものや、野望があるものは



自由平等のアメリカに来て「奴隷主」になった時に



奴隷が同じ人間なのに、自分の自由平等は主張しながら



他人(奴隷)の自由平等は、否定しているのだ



こういう矛盾を抱え込む精神を解消するために



奴隷と自分達は、違う種に属し、動物に近い、劣った存在であるという考える必要が発生した と 



何らかの人々の手で、自分達の利益になるよう社会的に作られたものである(構造主義)



奴隷制が廃止されても、その後ヨーロッパから移民として入った人々にも、利益があったから、意識?は続いた




ヨーロッパの人々が、中東イスラム教徒達についての概念をオリエンタリズムというが



作者は、アメリカ版のアフリカニズムと呼んだ 



フロイトが提唱した心理的メカニズム ↓



自己のうちに、醜い感情や性質があることを認識し



なおかつそれを受け入れると、自己がもたない場合



他者に、そうした否定的な部分を投影した上で、その他者がそうした性質を本質的に持つと思い込む

(投影)



他者を犠牲としながら、素晴らしい自己を保つことができる と



だから、オリエンタリズムにおいて、なぜイスラム教徒に、矛盾した性質が、付与されたかよくわかる 



本書を、きっかけにアメリカ文学に人種関係に、鋭いメスを入れた作品として興味をもたれるようになった 



本書が出るまで、白人男性を中心としたアメリカ文学だったが



女性作家や人種的マイノリティの作家にも再評価が進んだ と



強烈な光を放つ、アメリカの歴史・社会・文化に、影となっている暗闇には


いない存在として、扱われてきた黒人達が押し込まれている 



同時に、白人達の暗い部分もだ



その「暗闇」によってアメリカの輝かしい白さが、保証されている



※訳者解説がなければ、読むのに時間がかかった本かと、、




お読み頂きありがとうございます

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